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  • 2013/11/03

インドネシア人の「性活」ー厳格な戒律の狭間でー

インドネシアではイスラム教徒が9割を占める国です。それ故に、日本では当たり前のように売られているポルノ雑誌や女性のヌード写真集、アダルトビデオなどの売買が禁止されています。
しかしだからといって、ここに住む男性たちは決して禁欲主義ではありません。何しろ、この国の国民平均年齢は28歳以下なのですから、特に男性の性欲処理は必須です。
では、その手段とは?

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☆この記事は人によっては不快な内容が含まれている場合がありますので、その辺はご容赦ください。なお、万が一記事の内容に読者が不快感を感じたとしても筆者及びWalkersはその責任を負いかねます。


イスラム教は厳格な戒律を持つ宗教として知られています。そしてインドネシア国民の9割は、このイスラム教の信者です。

ですからインドネシア国内でのポルノ書籍やアダルト動画の流通は、法律で禁止されています。インドネシアでも日本のコミック文化の影響は絶大なものがありますが、それでも日本で言う「18禁」の作品はまず表に出ることはありません。

ところがここに一つの矛盾が現れます。インドネシアは年齢的にも若い国で、特に都市部は若者の活気で溢れています。それは非常にエネルギッシュで、まさか彼らが修行僧のように禁欲を貫き通しているとはとても思えません。

つまり彼らは、どこかでその有り余る性欲を発散しているのです。そう言えば、話に飛躍があるでしょうか? しかし文化とは、早い話が「パワーの発揮の象徴」です。例を挙げれば日本の江戸時代がまさにそうで、世界的にヒロシゲ・アートとして知られる安藤広重先生は春画(今で言うアダルトコミック)の作家でもありました。

つまり人間の文化とは極論付ければ「宗教的な破戒の結果」であって、そこから若者の性生活を切り離すことはできないのです。

そしてその法則は、現代のインドネシアにも当てはまります。

自慰はどのようにするのか?

まず、なぜこの世にポルノがあるのかというのを考えてみましょう。

それを使って性欲処理をする男が一定数以上いるから、というのがその答えです。当然と言えば当然の答えではありますが。

ところがインドネシア人男性は先述の通り、日本人のようなやり方でそうした行為をすることはできません。では、どうするか?インドネシア人も日本人も同じホモ・サピエンスである以上、やはり性の問題は不可避のはずです。

そこで今回は格闘技選手でもある筆者の所属団体「チームCORE」のメンバーに取材してみました。

このチームはイスラム、カトリック、バリ・ヒンドゥーの信徒が勝利のために汗を流していますが、同時に10代後半から20代までの男性で構成された「インドネシアの縮図」でもあります。今回の取材対象にはうってつけです。

この取材内容について最初に話した時、彼らは大喜びで取材を許可してくれました。むしろ「僕にも話させてくれ!」と食い下がるメンバーもいたほどです。

さて、上の写真で最も左側にいるのがMMAファイターのアルベルト君で、彼は男性の性生活知識の専門家を自称しています。その彼曰く、

「インドネシア人はあまりオナニーをしない」

とのことです。著者は一瞬、耳を疑いました。あれだけ明るくてパワーに満ちたインドネシアの男が、自慰行為をしないというのでしょうか?

「どうしてもやりたければ、スマホでネット検索をしてポルノ動画を探すけどね。ミヤビだって、そういう原理で人気者になった人だから」

ミヤビとは、日本のAV女優の小澤マリアさんのことです。インドネシアでは出演作にちなんで「ミヤビ」というニックネームで呼ばれています。頭の固いイスラム団体が反ミヤビ運動を仕掛けているくらい、ひっくり返せばそれだけインドネシア男性の間で人気を集めているのです。

ちなみにインドネシアでもスマートフォンが広く普及しています。大抵の若者はブラックベリーかサムスンの製品を持っていますから、ネット環境には困らないとのこと。

「でも、大の男はオナニーなんかじゃ気が収まらないよ。とっとと彼女を作るか、スパを利用するのが一般的だ」

アルベルト君はそう続けます。

インドネシアは風俗大国!?

インドネシアにおいて、「スパ」と呼ばれる店は三種類あります。

一つ目は女性向けのエステに類する店、二つ目は主に盲目の整体師が運営する健康マッサージ店、そして三つ目は男性向けの風俗店としての意味合いの店です。もちろんアルベルト君は、三つ目の店を指して言ってます。

しかし、インドネシア人は世界的に見て決して高給取りではありません。ここでの風俗はお金を持っている外国人向けではないのでしょうか?

「ジャワ島の大体の都市では一発10万ルピアが相場だから、やろうと思えば誰だってできるよ」

アルベルト君はそう断言します。10万ルピアと言えば、ごく普通のインドネシア人が1日か2日、薄給でも3日で何とか稼げる額です。日本の風俗店も格安のデリバリーヘルスは40分1万円という所がありますから、感覚的にはそれとあまり変わりないのかもしれません。

ですがそれよりも、厳格な一神教信者が殆どを占めるはずのインドネシアで売春という職業が是認されているという事実はやはり特筆すべきです。

「そもそも、オナニーというのはあまり自慢できる行いじゃないよ。だって、男として情けないじゃないか。特に僕らは総合格闘技をやっているんだし、女の子をメロメロにさせるフェロモンはもう備わってるはずだよ。オナニーばかりでセックスしないなんて、僕らには信じられないね!」

得意げに話すアルベルト君の横から、打撃コーチのデディさんがこう口を挟みます。

「インドネシアの中でも、ジャワ島の人間は手が早いんだ。オナニーじゃなくて、実際にスパで女と身体を交える機会が多い」

ちなみにデディさんの職業はジョグジャカルタ市警の警察官です。風俗を取り締まるどころか、逆にその存在を認めています。これもまた、ジャワ人の発想を考察する上での重大な事実です。

しかし、ここで新たな疑問が発生します。いくら安いスパとはいえ、お金を消費してしまうということには違いないわけです。そこでもう一つの手段として、恋人と交わるというのがあります。

婚前交渉は当たり前!

イスラムにしろカトリックにしろ、建前として結婚前の男女が肉体を交えるのはタブーです。

しかしインドネシアでは、ポルノ所持のようにそれが法律に明記されているわけではないようです。あくまで道徳上の問題としてそう言われているだけであって、ジャワ島の都市部ではもはや破戒化しているというアルベルト君の話です。

「それじゃあ、結婚前のセックスはみんなやってるの?」

「ど田舎の島にある村はともかくとして、ジャワでそれを責める人はいないよ。彼女がOKしてくれれば、それはGOサイン。心配ないさ。もちろん、避妊はちゃんとするけどね」

「ああ、堕胎は宗教的にまずいから?」

「というより、面倒くさいしお金がかかるから。日本だってそれは同じだろ?」

「それはそうだけど、インドネシアってコンビニの目立つ所にコンドームが置いてあるよね? あれは社会が避妊を推奨しているとか、そういう意味?」

するとアルベルト君は、

「え? 日本はそうじゃないのか?」

と、首を傾げました。

「日本じゃ薬局のちょっと隠れた場所に置いてあるもんなんだ。買うのが恥ずかしいっていう人が結構いるから」

「恥ずかしい? セックスすることが? 人間の摂理なんだから、恥ずかしがる必要はないだろ」

この時、日本人とインドネシア人の感覚の差異がはっきりと見えました。

アニミズムとプロテスタンティズムの相乗効果

つまりジャワ島の住人の発想は「自然の摂理には逆らわない」という、アジア特有のアニミズム的概念を基礎としているのだと思います。そしてそれを突き詰めると「自己の欲求には素直になる」ということになり、それが一神教の戒律をも包括しているというのが彼らのアイデンティティーです。

よく考えたらそれは日本も同じで、コンドームこそ店の目立たない所に置いてありますが、代わりにポルノ本は堂々と分かりやすい位置に置いています。男根をご神体として奉納している神社はあちこちにありますし、奈良県明日香村で毎年2月に行われるおんだ祭りは天狗とおかめがその場でセックスをして五穀豊穣を祈るという内容のイベントです。

つまりアニミズムは、性に関して寛容で柔軟な宗教なのです。さらに言えばアニミズムを基礎にしている国の人間は、たとえ一神教に帰依していてもやはり「一神教的アニミズム」の信者なのです。

その上でもう一つ考慮すべき要素は、インドネシアはかつてオランダの植民地だったという歴史的背景です。

オランダは16世紀以降、カルヴァン派プロテスタントが優勢になった国です。カルヴァン派とは何かというと、一口に言えば「人の運命は最初から決められている」という考えのキリスト教の一派です。これはそもそもは当時のカトリック教会が乱発した免罪符に対抗するための言論材料だったのですが、ともかくこの考えを発展させると「売春婦も生まれた時からその職業に就く運命で、それは神が決めたこと」という結論になります。

そのような発想の影響をインドネシアが受けているとなると、今回の取材で得た男性の性処理事情に合点が行きます。


ここで二点、注意を書いておきます。

一口にインドネシアと言ってもその国土は広大で、それぞれの土地や島に考え方の違う民族が存在します。従って上記に挙げたことは決してインドネシア人全体の普遍的な考え方だとは断言できないことを、申し上げておきます。特にアチェ地方は、アラブ並みに厳格なイスラム教徒が人口の殆どを占めています。

それともう一つ、この取材を以って著者は「インドネシアの女性は貞操が緩い」と結論付けることは断じてありません。この記事ではあくまでインドネシアのほんの一面を述べているに過ぎません。従って読者がこの記事の解釈を理由に下手な行動をした結果、トラブルに巻き込まれたとしても筆者は一切関与しません。

このルポタージュは、風俗情報のそれではないということを重ねてお断りします。



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Sawada Masakazu

インドネシアのライフスタイルを専門に書くライターですが、どういう因果か日本とインドネシアを往復しながら総合格闘技もやってます。 インドネシア各地方の風習、文化、流行りごと、そして今まさに熱くなりつつあるインドネシアの格 ...

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